訂正:「2025年秋に検索流入が段落ちした」は誤診でした
#0で私はこう書きました。「2025年9月〜10月を境に表示回数・クリック数が明確に段落ちし、以降低水準で横ばい」。危機の証拠として提示した数字です。
16ヶ月分のデータを取り直しました。月次で並べるとこうなります。
| 月 | クリック | 表示回数 | 平均順位 | CTR |
|---|---|---|---|---|
| 2025-08 | 1,305 | 71,343 | 33.2位 | 1.8% |
| 2025-09 | 987 | 38,319 | 21.8位 | 2.8% |
| 2025-10 | 862 | 27,045 | 16.3位 | 3.2% |
| 2025-11 | 680 | 24,166 | 17.7位 | 2.8% |
| 2026-06 | 881 | 45,196 | 16.8位 | 2.0% |
| 2026-07 | 870 | 38,441 | 16.1位 | 2.3% |
表示回数は確かに6割減っています。しかし同時に、平均順位が33.2位から16.3位へ改善し、CTRが1.8%から3.2%へ上がっています。 そしてクリック数の減少は34%にとどまります。
順位が下がって流入を失ったのではありません。順位が上がって、表示回数が減ったのです。
これは順位40〜50位で表示されていた無価値な表示が消えた、という現象です。裏付けもあります。
| 区分 | 表示回数 | クリック | CTR | 平均順位 |
|---|---|---|---|---|
| 国内 | 544,034 | 13,901 | 2.56% | 23.4位 |
| 国外 | 126,701 | 173 | 0.14% | 47位前後 |
| PC | 217,991 | 1,190 | 0.55% | 42.1位 |
| モバイル | 447,243 | 12,671 | 2.83% | 22.3位 |
16ヶ月の表示回数のうち18.9%は国外からで、クリックはわずか173件。PCも42位平均でCTR 0.55%。こうした「数字を膨らませるだけの表示」が整理された、という説明が最も無理がありません。
そして、2025年11月を底に表示回数は24,166→45,196(+87%)まで回復しています。 5年間何もしていないのに、勝手に良くなっている。
つまりこのサイトは「衰退中」ではなく、「回復基調にある」のが実態でした。施策の位置づけが変わります。立て直すのではなく、加速させる。
もう1つの罠:CSVをそのまま集計すると表示回数を4割過大に見る
Search Consoleからページ別CSVをエクスポートしたら、508行ありました。しかしサイトマップのURLは170件です。
内訳を調べたところ、508行のうち374行が #i #i-2 といったアンカー付きURLでした。目次プラグインが生成した見出しへのジャンプリンクで、Googleが検索結果にジャンプリンクを表示した分です。
| 表示回数 | |
|---|---|
| CSV全行の合計 | 183,511 |
| アンカー行を除いた合計 | 129,617 ← 管理画面の表示と一致 |
| アンカー行のみ | 53,894(重複計上分) |
CSVを機械的にSUMすると、表示回数を4割ほど過大に見ます。 実ページ数は134件でした。
#3で「母数の罠」の話を書きましたが、同じ構図がCSVの中にもありました。データを扱うたびに、まず母数を確認する癖をつけるべきだと痛感しています。
GA4がつながりました
#3で「GA4のデータがサイトの記事と1件も紐付いていない」と書きました。自社ツールの計測基盤に穴が空いていた、という話です。
この照合処理を修正し、121ページすべてで照合が通りました。 これでSearch Consoleにない指標——エンゲージメント率、直帰率、滞在時間、内部リンク数——が使えるようになりました。
Search Consoleと結合できたのは104ページ。ここからが本題です。
ただし、まだ使えない数字がある
正直に書いておきます。GA4の以下の列は、全ページで合計ゼロでした。
- キーイベント数
- CTAクリック数
- 内部リンククリック数
- 外部リンククリック数
- スクロール数
理由は単純で、GA4のキーイベント設定をまだやっていないからです。計測していないのだから、ゼロになります。
そして、ここで自社ツールが誤った提案を出しました。改善候補の推奨理由に「CTAクリックが確認できず、CTA配置や訴求の改善余地があります」と表示されたのです。
これは計測していないから0なのであって、CTAが機能していない証拠ではありません。 この提案を信じて動けば、存在しない問題を直しに行くことになります。
ツールの提案は、入力データの前提を確認したうえで採否を判断する必要があります。自社ツールでも同じです——というより、自社ツールだからこそ、こういう挙動を見つけて直せるのが検証の価値だと思っています。
3つのデータを重ねて分かったこと
ここが今回の核心です。Search Consoleだけ、GA4だけでは見えなかったものが見えました。
発見:「9位・CTR4%の優良ページ」が、実は滞在17秒だった
以下は、ある1本の記事の数字です。(以降、記事はA〜Kのラベルで表記します)
記事B
| Search Console | GA4 |
|---|---|
| 表示回数 2,171 | エンゲージメント率 15.2% |
| CTR 4.19% | 直帰率 84.8% |
| 平均順位 9.3位 | 平均滞在 17.2秒 |
Search Consoleだけを見ていたら、このページは「9位でCTR 4%超の優良ページ」です。触る必要がないように見えます。
しかしGA4を重ねると、開いて17秒で戻られていることが分かります。直帰率84.8%。クリックは取れているのに、中身が期待に応えていない。
これは典型的な検索意図とのミスマッチです。そして重要なのは、このページはタイトルを直しても意味がないということ。タイトルは既に機能しています(CTR 4.19%)。直すべきは本文です。
逆のパターンもあります。
記事A
| Search Console | GA4 |
|---|---|
| 表示回数 7,747 | エンゲージメント率 54.3% |
| CTR 2.05% | 平均滞在 82.9秒 |
| 平均順位 6.5位 |
6.5位という順位なら、CTRは5〜7%が期待できるところです。それが2.05%。しかし来た人は83秒読んでいて、エンゲージメント率も54%あります。
中身は悪くない。検索結果でクリックされていないだけ。 このページは本文を触る必要がなく、タイトルとメタディスクリプションだけ直せばよい。
同じ「改善が必要なページ」でも、直す場所が正反対です。 そしてこの区別は、Search ConsoleとGA4を重ねないと絶対にできません。
決めた:最初に直す11ページと、3つの介入ルール
以上を踏まえて、改善対象を確定しました。11ページを、性質で3グループに分けます。
グループ1:タイトルとメタディスクリプションだけ直す(4ページ)
順位は取れているが、CTRが順位に対して不当に低いページ。滞在時間・エンゲージメント率は問題なし。
| 記事 | 表示回数 | CTR | 順位 | 滞在秒 |
|---|---|---|---|---|
| 記事A | 7,747 | 2.05% | 6.5位 | 82.9 |
| 記事C | 23,928 | 1.76% | 5.4位 | 113.3 |
| 記事D | 2,057 | 2.14% | 9.8位 | 178.2 |
| 記事E | 1,628 | 1.23% | 10.5位 | 115.0 |
本文には一切触りません。 1ページ1時間程度の作業です。
グループ2:本文だけリライトする(4ページ)
クリックは取れているのに、滞在時間が極端に短いページ。検索意図とのミスマッチが疑われる。
| 記事 | 表示回数 | CTR | 順位 | エンゲージメント率 | 直帰率 | 滞在秒 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 記事B | 2,171 | 4.19% | 9.3位 | 15.2% | 84.8% | 17.2 |
| 記事F | 2,883 | 2.77% | 10.6位 | 28.6% | 71.4% | 36.6 |
| 記事G | 1,501 | 2.86% | 8.2位 | 33.3% | 66.7% | 28.2 |
| 記事H | 843 | 2.37% | 8.3位 | 20.0% | 80.0% | 28.6 |
タイトルには一切触りません。 流入クエリと本文の内容を突き合わせ、答えていない部分を書き直します。1ページ2〜3時間。
グループ3:内部リンクだけ追加する(3ページ)
被内部リンクが少なく、Googleがまだクロールしていないページ。
本文には一切触りません。 関連ページからのリンクを追加するだけ。1ページ30分。
なぜ介入を混ぜないのか
これが今回いちばん書きたかった設計です。
タイトルも本文も内部リンクも同時に直せば、確実に何かは良くなるでしょう。しかし28日後に順位が上がったとき、何が効いたのか分かりません。 逆に下がったときも、原因が特定できません。
そうなると、次の10ページに何をすべきかが決められない。1回目の施策の価値は、成果そのものより「次に何をすべきかが分かること」にあります。
だから3グループに分け、それぞれ触る範囲を限定します。28日後には、こう言えるはずです。
- グループ1が改善 → CTR起点の施策が効く。残りのページも同じ手法で
- グループ2が改善 → 本文リライトが効く。滞在時間を指標にできる
- グループ3が改善 → 導線の問題だった。内部リンク整備を優先すべき
同じ理由で、11ページ以上には手を出しません。 全134ページを一気に触れば、効果測定は不可能になります。
なお、全ページに一律にかかる技術改善(画像最適化、キャッシュ設定など)は並行して進めます。 これは全ページに等しくかかるため、個別ページの比較を濁しません。
後回しにするもの:未登録38件
#3で「現存する170URLのうち38件が未登録」と書き、これを直す方針を示しました。この優先順位を、下げます。
理由は2つあります。
理由1:優先順位をつけるデータが存在しない
未登録ページは、定義上、検索結果に表示されていません。だから表示回数も順位もありません。GA4にもほぼ記録が残りません。「どれから直すか」を判断する材料が原理的に手に入らないのです。
実際、自社ツールが選んだ優先10件をSearch Consoleのデータと照合したところ、直近3ヶ月の表示回数は9件が0、1件が4でした。「流入が確認できたページ」として選ばれていたのですが、その根拠は確認できませんでした。
理由2:事業インパクトが小さい
一方、11〜20位に38ページ・37,116表示が滞留しています。 ここを1ページ目に押し上げれば、CTRは3〜5%が見込めます。621クリックが1,500〜2,000クリックになる規模です。
未登録38件を全部登録させたとして、そこから得られるクリックは未知数です。確実に需要が実証されている場所から手をつけるのが合理的だと判断しました。
未登録ページの改善はやります。ただし順番が後です。
事前に宣言する成功基準
検証を名乗る以上、始める前に基準を出します。後から動かせないようにするためです。
28日後、各グループで対象ページの半数以上に改善が見られれば、同じ手法を横展開する。届かなければ手法を見直す。
グループごとの判定指標は次の通りです。
| グループ | 判定指標 |
|---|---|
| グループ1(タイトル) | CTRの向上 |
| グループ2(本文) | 平均滞在時間・エンゲージメント率の向上 |
| グループ3(内部リンク) | インデックス登録の有無 |
そして、1ページごとに着手前の予想を記録します。「このページは改善すると思うか、その根拠は何か」。#3で仮説が外れた話を書きましたが、外れたと分かるのは事前に書いていたからです。
次回
次回は実施報告です。11ページに何をしたのか、変更前後のスクリーンショットを添えて公開します。
特に、グループ2の本文リライトは中身の話になるので、\*\*「滞在17秒のページは何が悪かったのか」\*\*を具体的に書けると思います。
そして28日後に、答え合わせをします。
***
最後に。4本連続で分析記事を書いてしまったことについて、少し弁解を書かせてください。
母数が間違っていた(#3)、段落ちが誤診だった(今回)、GA4がつながっていなかった(今回)。これらを確認しないまま施策に入っていたら、間違った前提の上で1〜2ヶ月動き続けていたことになります。
とはいえ、4本は多すぎました。準備の完璧さを追うことと、動き出さないことは、外から見れば同じです。ここからは手を動かした記録を書きます。
