2026年7月11日
前回の記事では、5年間放置したメディアサイトの集客データ(GA4・Search Console)を公開しました。今回はその続きとして、サイトの技術的な健全性を診断します。
なぜ集客データだけでなく技術面も診断するのか。理由はシンプルで、この検証のゴールが「アクセス数を増やすこと」だけではなく、増えたアクセスを成果(KPI)につなげることだからです。どれだけ検索順位が上がっても、ページの表示に10秒以上かかるサイトでは、ユーザーは読む前に離脱します。つまりサイトスピードは、SEOとコンバージョンの両方の土台です。
今回も、計測結果をそのまま公開します。先に言っておくと、かなり悪い数字が出ました。
計測環境
- 計測ツール:PageSpeed Insights(Lighthouse 13.4.0)
- 計測日:2026年7月11日
- 対象:サイトのトップページ
- なお「実際のユーザーの環境で評価する」(フィールドデータ)は「データがありません」でした。これは実ユーザーのアクセスが少なく、Google(CrUX)が統計を作れるだけのトラフィックがないことを意味します。放置サイトらしい結果です。以下はすべてラボデータ(シミュレーション値)です。
計測結果:スコア一覧
| カテゴリ | モバイル | デスクトップ |
|---|---|---|
| パフォーマンス | 56 | 61 |
| ユーザー補助(アクセシビリティ) | 77 | 74 |
| おすすめの方法(Best Practices) | 77 | 77 |
| SEO | 75 | 75 |
Core Web Vitals 関連の主要指標
| 指標 | モバイル | デスクトップ | 合格ライン(目安) |
|---|---|---|---|
| FCP(最初の描画) | 5.8秒 | 0.6秒 | 1.8秒以内 |
| LCP(メイン要素の描画) | 13.6秒 | 2.1秒 | 2.5秒以内 |
| TBT(操作ブロック時間) | 140ミリ秒 | 200ミリ秒 | 200ミリ秒以内 |
| CLS(レイアウトのズレ) | 0 | 0.571 | 0.1未満 |
| Speed Index | 8.8秒 | 1.4秒 | — |
深刻な問題は3つ
数字を並べただけでは伝わらないので、重要度順に解説します。
問題①:モバイルのLCPが13.6秒(合格ラインの5倍超)
LCP(Largest Contentful Paint)は「ページのメインコンテンツが表示されるまでの時間」で、Googleが検索ランキング要因として使うCore Web Vitalsの中核指標です。合格ラインは2.5秒以内。このサイトは13.6秒でした。
モバイルユーザーは、メインビジュアルが表示されるまで13秒以上待たされる計算です。実際には誰もそこまで待ちません。検索流入の大半がスマートフォンであることを考えると、これは「せっかく検索から来てくれた人を、入口で追い返している」状態です。
Lighthouseの診断から、原因はほぼ特定できています。
- 画像配信の問題(推定削減サイズ 約1,000KiB):トップページにイラスト画像が大量にあり、圧縮・次世代フォーマット(WebP等)化・遅延読み込みがされていない
- キャッシュ設定の不備(推定削減サイズ 約2,500KiB):静的ファイルにキャッシュ有効期限がほぼ設定されていない
- レンダリングをブロックするリクエスト(推定削減時間 1,250ミリ秒):CSS/JSが描画を止めている
- 合計ペイロード約3,470KiB:1ページの転送量として過大
問題②:デスクトップのCLSが0.571(合格ラインの5倍超)
CLS(Cumulative Layout Shift)は「読み込み中にレイアウトがガタッとズレる度合い」です。合格ラインは0.1未満のところ、デスクトップで0.571。読もうとした瞬間にコンテンツが下にズレて、誤クリックを誘発するレベルです。
原因もLighthouseが指摘しています:画像要素にwidthとheightが明示されていない。画像の読み込み前にブラウザが領域を確保できず、読み込みのたびにレイアウトがズレる、5年前のサイトによくある実装です。
問題③:SEOカテゴリで「リンクはクロールできません」の警告
パフォーマンス以上に気になったのがこれです。SEO監査(スコア75)の中に、次の指摘がありました。
- リンクがクロールできない(クローラーが辿れない形式のリンクが存在する)
- メタディスクリプションが未指定
- 画像のalt属性が未指定
「リンクがクロールできない」は、前回report した「クロール済み-インデックス未登録が119ページ」という問題と直結している可能性があります。内部リンクがクローラーに正しく辿れない構造になっていれば、ページの発見・評価が阻害され、インデックスにも悪影響が出ます。ここは次回、該当リンクの実装を特定して深掘りします。
その他の発見
セキュリティ:HTTPSでないリクエストが3件
サイト自体はHTTPS化されていますが、ページ内に3件、httpで読み込まれるリソース(いわゆる混在コンテンツ)が残っていました。5年前のHTTPS移行時の残骸と思われます。ブラウザによっては警告表示の原因になるため、これも修正対象です。
アクセシビリティ:altなし画像、ラベルなしフォーム、コントラスト不足
ユーザー補助スコア(モバイル77/デスクトップ74)の減点要因は、画像のalt属性欠落、フォーム要素のラベル欠落、背景色と文字色のコントラスト不足など。アクセシビリティは直接の順位要因ではありませんが、alt属性は画像検索・クローラーの内容理解に関わるため、SEO文脈でも無視できません。
興味深い発見:「エージェントによるブラウジング」監査が0/2で不合格
今回の計測で個人的に最も面白かったのがこれです。Lighthouseに最近追加された「AIエージェントによるブラウジング適性」の監査で、このサイトは\*\*0/2(不合格)\*\*でした。レイアウトのズレとアクセシビリティツリーの不備が原因です。
前回のGA4データで「AI Assistant経由の流入が既に発生している」ことをお伝えしましたが、今後、ChatGPTなどのAIエージェントがサイトを読みに来る時代に、5年前に作ったサイトはAIからも読みにくいという事実が数字で出たわけです。これは復活プロジェクトの改善テーマとして、時代性のある論点だと考えています。
改善計画とKPI(技術編)
以上を踏まえ、本プロジェクトの改善対象に技術面を正式に加えます。目標値は次の通りです。
| 指標 | 現状 | 目標 |
|---|---|---|
| モバイル パフォーマンススコア | 56 | 80以上 |
| モバイル LCP | 13.6秒 | 2.5秒以内 |
| デスクトップ CLS | 0.571 | 0.1未満 |
| 混在コンテンツ(非HTTPSリクエスト) | 3件 | 0件 |
| クロールできないリンク | あり | 解消 |
施策の優先順位は、①画像の圧縮・WebP化・遅延読み込み+width/height明示(LCPとCLSを同時に改善)、②キャッシュ設定、③レンダリングブロックの解消、④混在コンテンツとクロール不能リンクの修正、の順で進めます。
一点、正直に書いておくと、\*\*サイトスピードの改善だけで検索順位が劇的に上がることはありません。\*\*速度は「遅すぎると足を引っ張る」減点要因であって、加点要因ではないからです。ただし、今後コンテンツのリライトで流入を増やしたときに、遅いサイトは離脱率とコンバージョンで確実に損をします。だからコンテンツ改善と並行して、土台を先に直しておく、という位置づけです。
ここまでの診断まとめと、次回
2回にわたる現状診断で、このサイトの課題が立体的に見えてきました。
- 集客面(前回):検索パフォーマンスの2025年9月以降の落ち込み、既知ページの約52%がインデックス未登録
- 技術面(今回):モバイルLCP 13.6秒、デスクトップCLS 0.571、クロールできないリンクの存在
次回は、いよいよ診断から施策へ移ります。まず「クロール済み-インデックス未登録119ページ」の中身を分類し、リライトするページ・統合するページ・削除するページの仕分けを行い、最初の介入を開始します。
放置サイトの復活は、派手な一手ではなく、こうした地味な計測と修正の積み重ねです。引き続き、すべてのデータを公開しながら進めます。
